悩める守護神、7年前の再現なるか 2011年アジア杯期間中に復調→V貢献の川島永嗣

 サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会で躍動する日本代表にあって、厳しい視線にさらされているのがGK川島永嗣(メッス)だ。コロンビアとの1次リーグ初戦では直接FKを防ぎきれず、セネガルとの第2戦ではシュートを弾いたところを目の前にいたマネ(リバプール)に詰められ、痛恨の先制点を許した。「立ち上がりのところで、自分のミスから失点してしまった。試合を厳しくした」。セネガル戦後、そう悔しがった35歳。だが同じように大会序盤は精彩を欠きながら見事に復調し、日本の優勝に貢献した2011年アジア・カップでの大活躍を覚えている人は少なくないだろう。

 カタールで開かれた11年アジア杯は10年W杯南アフリカ大会後に就任したザッケローニ監督の下、日本が初めて臨んだ公式大会。W杯直前に定位置をつかみ、日本の16強入りに貢献した川島はこの大会でも正GKを務めたが、シリアとの1次リーグ第2戦では今野泰幸(G大阪)との連係ミスから相手を倒し、一発退場となった。厳しい判定に泣かされた側面があったにせよ、どこか安定感に欠けていたのも事実。そして退場に伴う出場停止処分が明け、先発復帰した開催国カタールとの準々決勝で「事件」は起こった。

 1−1で迎えた後半、退場となった吉田麻也サウサンプトン)が自陣の左サイドで与えたFKで川島は壁を1人しか立たせず、遠いサイドへのクロスを警戒するような形で構えた。だが相手キッカーに近いサイドを直接射貫かれ、勝ち越しを許した。くしくもロシアW杯のコロンビア戦の失点シーンと同じような位置からのFKだった。数的不利の中、チームは香川真司ドルトムント)の奮闘で逆転勝ちを収めたが、川島不在のサウジアラビア戦を西川周作(浦和)が完封勝ちに導いた直後だっただけに、当時もGKの交代論争が巻き起こった。

 そんな雑音をかき消したのは、川島自身だった。「ミスを引きずっていたら前に進めない」。PK戦にもつれた韓国との準決勝では鬼気迫る形相で完璧にコースを読み切って1、2人目のキックを止め、気押された3人目は自ら枠を外してしまった。李忠成(浦和)の美しいボレーシュートで競り勝った豪州との決勝では、相手のエース、キューウェルとの1対1を2度もしのぐなど好セーブを連発。決勝の最優秀選手「マン・オブ・ザ・マッチ」に選出された。

 アジア杯で代表の正GKの座を揺るぎないものにした川島は、出場権獲得に大きく貢献した14年W杯ブラジル大会も全試合に出場。その後は所属していたスタンダール(ベルギー)でポジションを失い、15年には所属先のないまま半年間を過ごしたこともあった。16年夏に加入したメッスでも当初は「第3GK」の立場。代表のレギュラーも西川に奪われたが、腐らずに練習に邁進(まいしん)した結果、代表でも所属先でも正GKに返り咲いた。

 35歳となった今も、ここ一番で見せる鋭い反応は健在。英語だけでなく、イタリア語やフランス語も自在に操る知性派で、日本のGKでは他の追随を許さない豊富な国際経験を積んできた。安定感の求められるポジションだけに、当たり外れが多くては話にならないが、本田圭佑パチューカ)や長友佑都ガラタサライ)ら他のベテラン勢がロシアW杯でのチームの躍進を支えているのも事実。7年前のドーハで輝きを放ったように、守護神が再び大会期間中に調子を取り戻せば、本田同様の「手のひら返し」の称賛が待っているはずだ。(運動部 奥村信哉)

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